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■MO12・柚

My girl. My girl. Come back to me.(the pillows「My girl」)

ライブを終えた日の夜、僕は妙な気分になって眠れなくなった。まぶたを閉じると愛野(あいの)の悲しげな顔が見えた。
 頭をふっても、なにをしてもそれは消えなかった。仕方が無くTシャツ一枚で外に出ようとしてその寒さに僕はすっかり眠気を奪われてしまった。
 仕方が無く着込み、外に出た。鍵を閉めてポケットに鍵を手ごと入れると、手は引きこもりになった。
「……」
 マンションを降りて適当に辺りを散策した。人は誰も居らず、世界が滅んだ後みたいな光景だ、と思う。
 陸橋の上に立って下の方を見ていると、不意に人の気配を感じた。
 右を見ると、あの女が立っていた。僕は今まで来た道をふり返り早歩きで来た道を戻りだした。
「ま、まってよ!」
「……」
 ひたすらに僕へ声をかける愛野が居た。
「ま、まてってばぁ……」
 愛野の声がすこし猫なで声になった。そう言うクセが、彼女はなおってない。困ったことがあるとすぐそう言う声を出した。
 僕は立ち止まって、できるだけ声を低くして言う。
「ついてくるな」
 後ろの方でくすくすとした笑い声があった。
「あんまり声変わってないよっ」
 僕はまた歩き出した。
「ついてくるなって言ってるだろ!」
 今度は地声で言った。
「……やっぱり、あのことまだ気にしてるの?」
「気にしてないけど、もうに気してないけど、お前はキライだ」
 僕が言うと彼女の気配が沈むのを感じた。僕は悪くないぞ。
「話くらい聞いてくれたっていいじゃんっ……」
「……」
 その泣きそうな声から僕は必死で逃げた。僕は悪くない。
 とたとた、と駆ける音のして、僕は後ろをふり返った。目の前にあるのは茶色の靴底だった。



 目を覚ますと、やけにかわいらしく、甘い匂いのする部屋に僕は居た。着ていたコートとマフラーは脱がされ、イヤな予感しかしなかった。起き上がると寝ていた場所がベッドの上だと言うことに気づいた。
「……」
 ぼんやりと事の重大さに気づき、飛び退いた。
「おはよう。って言ってもまだ四時前だけどね」
 どこからとも無くやってきたのはロングTシャツにジーンズというラフな格好の愛野だった。
「……拉致!」
「人聞き悪いなあ」
 愛野はむすっと返した。「むしろ助けたことに感謝して欲しい」と言いたげだった。
「なんで僕がお前の部屋で寝てんのさ!」
「有川が倒れるから……」
「お前のせいだろ!」
「大丈夫。その布団去年洗ったばっかりだから清潔だよ」
「清潔じゃねぇ!」
「それにしても有川くん激しかったわ……」
 愛野は両手を頬に当てて言った。付き合いきれない。僕は立ち上がると、愛野の雰囲気が変わった。
「なんだよ」
「話、聞いてくれるまで帰らせないから」
「警察呼ぶぞ」
 僕はそう言って彼女の脇をすり抜けた。
「どうして、話くらい聞いてくれないのよ……」
 鼻声が聞こえた。僕は気にせず出たがすぐに立ち止まり、引き返してしまった。
「コートとマフラー!」
 僕が言うと愛野は目を擦りながら僕のコートとマフラーを持ってきた。
「知ってるよ……。お前が風邪ひいてでれなくなったことくらい……!」
 愛野は意外そうな顔をした。
 僕は愛野からコートとマフラーをふんだくるとそこから出た。

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