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■MO12・落葉

ムーブメントを越えることを目標とした僕らはもっと頻繁に会うようになった。楽器の練習や作詞作曲に対するダメ出しも行われ始めたが、基本的にそれはなく、練習や新曲作りだけだった。
「いや、良い曲書くな。ユキト」
 僕らは開始直前だった。ふいに、山中(やまなか)が言った。
「ありがとう」
 最後のチューニングをしながら答えた。 
 僕らはまたムーブメントの前座として呼ばれていた。僕が今回は引き受けたのだ。
「噂では聞いてたけど、やっぱ広いハコだなオイ」
 緊張したように山中が叫んだ。僕らは調整を終えて袖に戻った。
「ここで、ガツン。と迎え撃ってやる」
 僕は言った。開場が始まって、早めに始まるらしかった。ステージに立つと、向こう側の袖に、見覚えのある女性が居た。
「So long,my comet」
 客に入り交じって、愛野(あいの)の姿が見えた。
「And,――」
僕は山中、代田(しろた)、宇摩(うま)を見た。
「We are ……fight back you!」
 激しいシンバルの音。僕は跳びながらギターを掻き鳴らした。まずは、『彗星』。
 曲が終わり、観客が呆然としているのが見えた。僕は持参のスポーツタオルで汗を拭き、水をほんの少し飲んだ。
「えぇ、――」
 マイクを通して喋った。代田がにやにやしながらこっちの方を見てる。
「今の、急ごしらえにしては上手く行ったよね?」
 客がざわめいた。『彗星』のほうを急ごしらえと勘違いしてるのだ。実際は曲の前のコーラスである。
 それがおかしいのか、山中と代田がげらげら笑った。宇摩の笑い声も聞こえた。僕も、笑う。
 後ろをふり返り、全員の顔をまたみた。そして、そのままイントロを引き始める。シンバルがカツカツカツという音を刻む。
 僕は前を見てマイクに近づいた。みんな僕の方を見ていた。

  一緒にいようなんて言う約束は
  辛い現実に打ちのめされた。
  僕は今、独りでステージに上がる。

 シャン、シャン、シャン、僕は跳んだ。静かな夜から一転して、激しい朝を迎えるような。
 息をすって唄った。

  みんな笑ってた。なんて言おうと笑ってた。
  甘い蜜を吸ってた。
  一緒にいると約束したあれは
  ただの幻だった。
  僕は一人だった。

  幻を見ていた。
  彼女は僕に語りかけて
  彼は僕にギターの音色を思い出させたんだ。
  そして僕は今、光の元に立つ。
  でもね、独りじゃない
  独りじゃない。
  独りじゃない。

 僕は叫び、山中のギターソロが入る。
 ソロが終わり、僕は再びマイクに近づいた。

  幻じゃないな。
  みんな僕に話しかけてくれる。
  みんなで楽器を弾くんだ。1,2,3
  そして僕は光の元に立つ。
  独りじゃない
  独りじゃない
  独りじゃない

 いんいんと楽器の響きが残りながら、僕らは退散した。
 観衆と、あいつに、僕はファックサインを残していった。
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