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■ナイフを持った少女

 彼女は他人の前で涙を見せない。それがはなについてかのけ者にされていた。むしろ、彼女が周りを避けていた。
 けれど彼女は綺麗で、言い寄る男は少なくない。その度光る彼女の鋭い目の光はナイフに似てた。
(カッコイイな)
 僕は密かにそう思っていた。みんなの表情を見れば、たぶんそんなこと微塵も思ってないだろう。
 そう思いながらも、土曜の朝を犬の散歩に費やしていた。
 田んぼのあぜ道を抜けると言うとき、向こう側に見覚えのある女性を見かけた。
「あ……」
 彼女は僕に気づいてなかった。田んぼの横にある電柱に花束を添えていた。
 僕はそこから引き返すことも出来たはずなのに、犬の方が言うことを聞いてくれなかった。犬は、
「いつもの道を歩かせてくれよ」
 とダダをこねた。
「しょうがないな」
 僕は妥協してしまった。すると、彼女はこっちに気づいて、まず顔を隠した。目尻に浮かぶ涙もナイフのように輝いていた。
「なによ」
 彼女はわざわざ自ら僕が近づくのを待っててくれた。
「ここ、むかし、酔っぱらったおじいちゃんが原付でつっこんだって聞いたけど」
「……私の祖父だけど」
 彼女はいつものむすっとした顔で言った。
「あ、ごめん」
「犬の散歩?」
「そうだよ。たしか、名前がチャコ」
「『たしか』?」
「ごめん、よく憶えてないんだ」
 彼女は仏頂面を崩さずてきとうに頷いた。
「ねぇ、なんでいっつも不機嫌そうなの?」
 言ったあとでなんとなく、しまったと思った。
「祖父の言いつけ。『他人の前で笑うな』って」
「おじいちゃんっ子だったんだね」
 僕がそう言って、妙に、気まずい、沈黙が流れた。犬がドヤ顔でこっちを見てる。その顔はまさに「やっちまったな!」と言いたげだ。
「……ありがと」
「え?」
 彼女の頬は紅潮していた。
「照れてる……。ってことは僕はもう他人じゃないってことなの?」
 今度はきりっと僕を睨んだ。
「なんで、こんなヤツに喋っちゃったんだろう」
 次に彼女の顔に浮かんだのは暗たんとしたものだった。
「なんだ、ころころ表情が変えれるんだね。もしかしたら特殊メイクでその表情に貼り付けてるのかと思った」
「そんなわけないでしょう」
 呆れた顔になった。なんだか面白い。
「なんだか、きみを笑わせたくなってきた」
 僕がそう言うと、彼女は深くため息をついた。あきれ顔を深め、彼女は肩をすくめた。
「やってみろ」
 その顔は、ナイフみたいに尖った微笑みに見えた。



イブッキーからのおだい小説でした。
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