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■六月のおだい「潦」

What do you want?(キミは、何がしたい?)
                   (the pillows「ROCK'N'ROLL SINNERS」)


 雨が降っていてひまだった。梅雨ってヤツだ。だから、僕は捨てるはずだったアコースティックギターを取り出した。
「……」
 何年ぶりだろうか、これを触るのは。
 高校生の頃、本気でミュージシャンを目指していた。こいつを一本持って文化祭のステージに上がったこともあった。けど何も変わらなかった。ニルヴァーナのダムなんてだれも知らなかったし、ピロウズのブラックシープなんてもっとしらけた。英詩なだけニルヴァーナがマシだった。
 弦を張りっぱなしで背板の曲がったアコギは、もうろくな音が出なかった。
 ギターを投げ出して、僕は寝転がった。
 そういえば、近くの質屋に、ギターが置いてあった気がする。友達がそこでバイトしていた気がする。
 友達に会いに行くくらい、いいだろ。僕は傘を取ると家を出た。
 そう言えば、今日はあいつが出てこない。そう思いながら質屋に向かう。イヤホンをつけてアイポッドの中にある曲をシャッフル再生した。
 質屋に到着し、ギターのあるコーナーを探した。と、見つかった。
 棚に沢山のギター達がずらっと並んでいる。給料を貰った後だから、そこそこ僕は金持ちだ。
 何が良いかとうろついているところで、見知った男を見つけてしまった。
「有川」
 向こうから話しかけられてしまった。バイト先の同僚、山中である。
「あ、山中さん、こんにちは。……ギター趣味なんですか?」
「趣味じゃねえよ。仕事だよ」
 無精髭の男はジーンズのポケットに手を突っ込んだまま答えた。
「仕事? ……ここでも、バイトしてるんですか?」
「あぁ、ちがうちがう。バンドやってんだ」
「……バンド?」
「あぁ」
「だから、ギターを買いに?」
「いや、昨日こいつを質に出したんだが、売れてるかどうか確認しに来ただけ」
 山中が指差したのは一本の黒いエレキギターだった。
「で、おまえ、買うの?」
 山中が言った。いやな予感がする。
「え、まあ、はあ」
「じゃあ、あれ買えよ。俺が要らないアンプもやるから」
「え? 別に良いですけど」
「よし判った」
 と、僕はあっという間に彼のギターを買ってしまった。財布が随分薄くなった。
「ちょっとついてきな」
 山中は手招きする。
「え?」
「いや、アンプやるって言っただろ?」
「まぁ……」
 言われるがままについていくと、そこは僕の住むアパートと同じくらいぼろぼろだった。けど、立地条件で言うと僕の所より悪い気がした。アパートの入り口でまたされ、彼は一個の黒いアンプを持ってきた。
「ほら」
「あ、ありがとうございます」
 何とシールドもついていた。僕はなんだか恐縮してしまう。
「俺のムスタングをよろしくな。あと、また、コンビニで」
 そうして僕は山中と別れた。
 本当に、ポーリーは一度も現れなかった。
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