■スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

■About a boy

タイトルはまったくもって関係ない。

軽く連載化してきた。



 僕が彼女に家を教えたせいで、彼女は頻繁にウチに出入りするようになった。
 出入りしてくれるのは一向に構わないのだが、窓から土足で出入りされるのは困る。
 そんなわけで、僕は、正座する彼女の前に仁王立ちしているのである。
「ごめんよ。もうやらないよ」
「昨日もそんなこと言ってたよね」
「うぅ……」
 彼女はうなだれた。
「とりあえず、靴を置いてきなさい」
 僕がそう言うと、彼女はぱあっと顔を明るくし、靴を履いたまま立ち上がろうとして僕の視線に気づいたようだった。
「……」
 無言で彼女は靴を脱いだ。
 靴を置いてきた彼女は不敵な笑みを浮かべながら僕のベッドに寝転がった。
 僕は腰に手をあて、一呼吸置いてから机の椅子を引っぱり出して腰掛けた。
「そうだ、キミ」
 人のベッドの上をごろごろ転がる彼女が、不意にぴたりと動きを止め、顔を持ち上げていった。
「なに?」
「今日は、来るよね?」 
 その今さらな、かつ不敵な笑みを前に、僕は戸惑った。けれども頷きを返す。
「今、兄が帰ってきている」
「え?」
 僕の身体は硬直した。
「ちゃんと、三人分つくってくれよ?」
「……」
 脂汗が吹き出る。そして、その、彼女のお兄さんと対面したとき、僕はどう反応すればいいのだろうか。と言うかどんなことになるか判ったもんじゃない。僕の脳内にはやれ「妹は貴様にわたさん」だの、やれ「お前の血の色は何色だ」だの言う彼女の兄の姿が浮かんだ。
「さあ、そうと決まったら行こう」
「いや、やっぱ、今日は……」
「マン・ハント!」
「アッー!」
 彼女に捕まった僕はずるずると引きずられ、彼女の家に向かうこととなった。

 分譲マンションのワンフロアぶち抜き。彼女の家にはいるともう既に爆音でCDがかかっていた。
「ジローめ。ウルサイったらありゃしない」
 彼女はそう言うと僕を置いてつかつか先に行ってしまった。
 どうしようか。ぼくは頭を振り、覚悟を決め、中に入った。
 台所に行き、夕飯の準備をする。食材は買い溜めておいたし、大丈夫だろう。そう思ってシチューを作り出す。
「さあ!」
 彼女の声。リビングの方をふり返った。
「……」
 彼女の横にいるのは金髪の青年だった。どこからどう見てもイケメンである。金髪には染めたとき特有の痛みもなく、もともとそういう色だったと言われても違和感がない。
「鼻筋なんかがよく似ているだろう」
 彼女は自慢げに言った。
 言われてみればそんな気もするが、どちらかというと美男美女カップルっぽい。
「では、私は部屋を掃除するから。二人とも仲良くやっていてくれたまえ」
 そう言うと彼女はリビングから消えた。止める暇さえない。
 しかし数十分経っても彼は何も言わず、ただソファに座ってその長い足を組むだけだった。
 シチューが煮込む工程に入ったとき、彼が声を上げた。
「あぁ、きみ」
「なんでしょう?」
 失礼だとは思いつつもシチューを焦がさないことに僕は集中した。
「タマネギは入れないでね。おれ、嫌いだから」
 もう既に遅い。
「あ、もう遅かったりする?」
 彼はのんびりとそんなことを言った。
「あ、はい……」
「いや、別にいいよ。我慢して食べるから」
「どうも……」
 沈黙。シチューの煮込む音だけが響いた。
「なあ」
「……はい?」
「噛んだの?」
 何がなんだか判らなかった。そして、彼女のことだと知れた。
「噛みました……」
「ほぉ……。じゃああの話も聞いたんだ」
「はい」
「どう、思った?」
 背中に視線を感じた。今まで気づかなかっただけか。
「正直、引くだろ?」
 彼は嘲るようだった。彼女を嗤ったように思えたが、違うことに気が付いた。
「正直に言ってくれよ」
「いいえ」
 正直な言葉だった。
「僕は、彼女に笑っていて欲しいんです。ああいうところのせいで彼女が笑えなくなるのだとすれば、僕はそれを肯定できるようにしたいです。そうすれば、彼女は笑ってくれるでしょう?」
 気が付けばべらべらと喋っていた。
「……俺とは違うんだな。ちょっと、羨ましいぜ」
 彼はぼんやりと、誰に言うわけでもなく言った。
「あいつのこと、宜しくな」
 答えようとして、元気な声が流れ込んできた。
「もういやだ! あのへやくさい!」
 彼女は涙眼だった。何をどうしたら部屋掃除でそうなるんだよ。
「おぉ、今日はシチューか……」
 僕の横に立った彼女はそんなことを言った。
「そうだ、ジロー。紹介しよう。彼が私の婚約者、渡辺 葉太だ」
 僕は典型的なズッコケをかましてしまった。
「なんだ? 婚約者じゃ不満か……。じゃあ何がいい?」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
「ふむ?」
 彼女は不思議そうに首を傾げるだけだった。
「まあいい。ヨータ。紹介しよう。私の兄で代田次郎。気軽にジローと呼んでもらって構わない。キミの義兄さんなのだからね」
 僕とジローさんは共に典型的なズッコケをかました。
「ちなみに次郎なのは父が太郎だからさ!」
 彼女はどこか自慢げだった。
「まあ積もる話はあとにして、夕餉といこうじゃあないか」
 彼女はどこか楽しげだった。それは、夕食を三人で食べるからだろうか。

 理由はともかく、そんな彼女をずっと見ていたいと、思った。

関連記事
スポンサーサイト

■コメント

■コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

 

プロフィール

KANTA

Author:KANTA
Are you alien?

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。