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■レッツ シー イフ ザッツ トゥルー オア ノット第三章・1


第三章

「どうだったの? 故郷は」
 マックが何となく、実験的に作ったべっこう飴をあまりの不味さにかみ砕きながら書類を片づける僕に、意見を求めるべく隣でたっていたマックが聞いた。数日で帰ってきてしまったため、早すぎるとかなり驚かれたらしかった。
「……べつに」
 顔に思ったことが出たのか、マックはそれ以上何も聞かなかった。
「で!」
 叩くように僕の右肩に片方の手を乗せたマックが言った。
「どうよ? 私の飴は」
 僕は顔を逸らした。
「……」
 それで全てを悟った彼女は、しょぼしょぼと台所に向かっていった。
「もー、何がおかしいの? 意味わからん!」
「……なんで、急にどうしたの? 料理なんて」
 彼女は腕を組んで何かを思案するような顔をしながら僕を見た。
「女の子は、料理くらい出来ないと、ダメだって気がついた!」
 今さらか。と言うかもう手遅れなきがすると僕は内心思いながら立ち上がった。
「かなり焦げてたから、火が強いんじゃないの?」
 僕も台所に立った。
「エニモルって、料理できるんだっけ?」
「最近は作ってないけど、学生の頃はよく作ってたよ」
「……なんか、エニモルに負けるって屈辱」
 マックは呟いた。
「それ、どういう意味?」
 知らんぷりを突き通すマックを見て、呆れた僕は正面を向いた。台所の窓に、あるものが見えた。
「マック」
「なに?」
「あれって、もう誰も使ってないの?」
 僕は窓から見える廃墟を指差した。
「あー、うん」
「そっか」
 怪しい人物が良く出入りするという建物はいつも、何かしらの廃墟だった。
 僕は壁にかけてあるマフラーと手袋、防風眼鏡と帽子を取ると、身につけた。
「なになに? どこ行くの?」
「ちょっと、出かけてくる。料理頑張って」
 僕は駆け足で外に出るとリーフェルングに跨り、さっき見つけた廃墟へ走らせた。
 見た目新しい廃墟だった。三角屋根の上には十字架の乗ったもので、珍しいなと思いながら腰の剣を気にしながら中に入った。
 中は埃くさく、この間回った廃墟と変わらないように思えた。だが、ここは調べたことのない場所だ。何かあるのかも知れない。そう思って剣を構えながら周りを見渡した。
「やっぱり、来たな」
 満足げな声。だが聞いたことのある声だった。
「……」
 暗くてよく見えないが、正面の壇上にいる小柄な人物がいる。女性のようだが、それにしてもかなり小柄に見えた。
「……おまえは、だれだ?」
「会ったこと、あるだろう? 忘れたのか? 薄情者だな」
 嘲笑するように影は言った。
 とん、と影は壇上から降りて素早く僕の目の前に立った。なぜか剣を振るうことが出来なかった。
「ここまで近づけば、頭の弱いきみでもわかるだろう?」
 鼻先に顔を近づけた影。白い肌に漆黒の髪。大きな瞳にくっきりとした眉。長いまつげ。いたずらっ子のような顔で微笑む小柄な少女は、いつかの歩けないニニー=サリヴァンだった。
「……ニニー、か? 歩けないはずじゃ……」
「信じてたのかい? 純粋なんだね。ありがとう。信じてくれて」
「……」
「そんなんだから、好きだった女の子から忘れられるんだよ。きみは」
 僕は無意識のうちに構えていた剣を振るった。だがそれはひょいと避けられてしまった。
「おこるなよ」
 ニニーはにやにやしながら言った。
「お前は何なんだ?」
「知りたいかい?」
 ぐいっと人をくうような笑みを浮かべたまま顔を近づけるニニー。僕の顔に彼女の呼気がかかった。狂気的な雰囲気。何をし出すか判らない。そんな感じだった。
「反政府組織、アウフ・エア・シューティング、リーダーのニニー=サリヴァン」
「きみが?」
 言ったものの、その猟奇的な空気を身に纏う今の彼女にその称号は相応しいものだった。
「そう。なかなか似合ってるだろう?」
 彼女はひょいっと僕から二、三歩離れ身につけているスカートの裾を自慢するようにひらひらさせた。服装も最初であったあの寒そうな服とは違い、寒いのに髪の毛と膚を露出させるような服を着ている。
page4.jpg
「どっちが、本当のきみか、教えてくれないか」
 僕は剣をニニーに向けていった。
「それは、言わないといけないことかい?」
 僕が目を瞑って剣をおろすと、彼女は「フフ」。と笑った。
「おろしたね? きみは治安を維持するライゼだというのに」
「ただの女の子を斬れないね」
 次の瞬間、痺れと衝撃が同時に来た。廃墟の床に叩きつけられた僕は咄嗟に立ち上がって体勢を立て直そうとするが、立ち上がるために立てた右腕を誰かが払い、足で押さえつけた。
「なんだって? もう一度言ってみたらどうだい」
 右腕が軋む。
「う、ぐ、た、だの女の子って、言わ、れるの、が、嫌なのか?」
 言いながら痛みで声が勝手に漏れた。右腕を踏む力が強くなる
「……」
 ぐっと右腕に力が入ったとき、僕は左腕で彼女の細い身体を殴った。
 彼女はごろごろと吹き飛ばされるのをみて僕は右腕を押さえながら立ち上がった。
「……」
 ニニーはゆっくりと立ち上がると、ふらふらこっちに寄ると僕の目の前で座った。何がしたいのか判らなかった。
 彼女は膝を抱えて、その膝に頭をうずめている。
「ニニー?」
 急に女の子らしくなったニニーの名前を呼んでみた。
 彼女は顔を上げてにやりと笑い、立ち上がって僕の顔を正面から殴った。まともに避けられずに喰らった僕の目の前は真っ暗になった。
 目を開けてから、周りが廃墟なのを確認した。どれだけここで気絶していたんだろうか。殴られた顔面を右手でさすって、右腕にまかれたものと、包帯の隙間にはさんであるものに気がついた。
 包帯はニニーが巻いてくれたのだろう。いまいち理解のしがたい奴だと思った。包帯の隙間にはさんであった紙には、「アシタ ヨル ココ」と書いてあった。僕はそれをポケットにしまい、立ち上がってライゼエスィヒに戻った。どう言い訳をしようか。ニニーがまともじゃないこと知れば、マックは傷つくはずだ。
 僕がライゼエスィヒに戻ると、暖炉前のソファにはメーレンが仰向けで寝転がりながら本を読んでいた。この人も本を読むのかと言う雑念を押しやりながら僕は声をかけた。
「今戻りました。何の本です?」
「レッド=ニコルソンの『シューター解体読本』」
 メーレンはこちらを見ずに言った。この人は開き直ることにしたのか。さらに驚いたのは、よく見ると彼女は眼鏡をしている。
「眼、悪いんですか?」
「まあね。近くのものが見えづらい。戦闘に支障はないし、無くたって良いんだけど」
 メーレンは倦怠感丸出しに言った。仕事が少なくなって暇で暇でしょうがないのだろう。
 そんな話をしていると、台所がやけにうるさい。
 僕が台所を気にしていると、そのままの姿勢でメーレンが言った。
「ニニーとか言う女の子が来てるよ」
 僕はそれを聞くと急いで台所に入った。中では、マックと車いすに座り雪だるまのように防寒着を着込んでいるニニーが居た。
「あ、また旅に出たのかと思った」
 マックがにやにやしながら言う。
「何やってるんだ?」
「マックに料理を教えてるんです」
 ニニーが、微笑みながら言った。先ほどとは別人としか思えないが、今は隠していない黒髪はニニーのものだった。
「……時間の無駄じゃない?」
 僕は今日食べさせられた飴のことを思い出す。あれは本当に食べ物だったのだろうか。
 ニニーは苦笑して取り繕った。
「けど、上手になりましたよ。食べてみます?」
 有無を言わさずニニーは注がれたふつふつとした黒い液体を僕に押しつけた。自分が食べさせられる予定だったらしい。
 僕は受け取ったものの、それをもう一度見た。黒く、どろどろした液体の中には、意味のわからないものがぷかぷかと浮いている。狂ってる。
 ニニーやマックの期待するような視線に耐えられず、僕はソレを一気に飲み干した。
 どろりどろりと舌の上で混ざり合う味の奔流。泥を噛むような感覚。喉の中でうねる生き物のようなそれ。
 卒倒しかけた。
 僕は棍棒で殴られたように朦朧とした意識の中、そのスープの入った鍋を持つと流し台に流した。隣でマックの絶叫が聞こえる。
「私の芸術が!」
 何が芸術だ。
 鍋を桶に入った水で洗ってから適当に置いた。ニニーは未だに苦笑している。このやろう。
「エニモル! 責任とってあんたが料理作ってよ」
 マックの糾弾。
「……いいけど、きみは、僕が料理作ってたって事忘れてないか?」
 マックの顔がぎくりと硬直した。だが、意地を通したいのだろう。
「じゃあ、そのお手並み拝見って事で」
 僕は頭を掻いてさっき洗った鍋を持ち上げると、まだ沢山余っている水と、市場で買ってきたのであろう食材を見渡した。



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