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■四月のおだい「桜」

 『I want some help(俺には助けが必要だ)
  To help myself(自分を救うためにな)
     (NIRVANA「Polly」)』



 今年の春は凄く寒かった。
 本当に桜が咲くのか。そんなことを思っていた。
 就職先が見つからなかった僕は親に意地を張って仕送りを断り、アルバイトだけで生活することになった。要らないものは捨てたり、売ったりするために部屋の整理をしていた。
「咲くよ。ぜったい」
 ポーリーは頭の中で言った。
 金髪の女の子は学生時代に買ったキャラクター小説の山に腰掛け頭の左右で結った髪を揺らしながら僕が売ろうと決めたギターをいじっていた。
 そうかなぁ?
「そうだよ。咲くね。絶対に」
 陶器のような顔は勝ち気な笑みを浮かべた。
 桜なんて咲かない。こんなに寒いんだ。咲くわけがない。
 アコースティックギターが鳴る。
 ポーリーが鼻歌を歌う。

  I want some help
  To help myself

 ニルヴァーナのポーリーと言う曲の一小節だった。僕はこの曲が好きだった。だから、彼女の名前にしたんだ。
 金髪の女の子がガールフレンドなんて幻想だ。だいたい金髪碧眼っていうのがもうナンセンスだ。あり得ない。こんな女の子は、僕しか知らない。僕しか見えない。僕しか触れない。
 鼻歌はまだ続いていた。

  She caught me off my guard
  It amazes me, the will of instinct

「なあ、その歌がどういう意味か、判ってるのか?」
 つい声に出して言ってみた。虚空に向かって。
「知ってるよ?」
 ポーリーはにやりと笑う。
「こんな事しないでね?」
 僕の妄想のくせに。
「でも幸せでしょ?」
 否定は出来なかった。そんな僕を見てポーリーはにたりと笑う。
 僕が顔を逸らすと、窓から、外にある桜の木が見えた。
 枝についている、大きな蕾を見た。
 誰かに押し倒された。そんなばかな。
「けどやっちゃもんね」
 ポーリーの重さを感じる。あと、熱も。そんなわけない。
「けど私はここにいるもんね」
 いや、だからそんな――。
「ほら、蕾が大きくなってるでしょ?」
「……」
「咲かない花は、無いんだぜ……?」
 なんだよ、それ。
「とにかく、ユキトには必要でしょ?」
 なにがだよ。
「自分自身を救うための、助けがサ……」
 部屋はしんと沈黙した。
 なんだよ。急にだま――。
 ポーリーが僕の首に手を回した。暖かい。いやばかな。
「私が助けてあげるよ」
「……妄想のくせに……」

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