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■レッツシーイフザッツトゥルーオアノット第二章・3




 トンチョクに行った旅の話をあらかた話し終えた頃には、もう日は完全に暮れていた。
「……」
「もうこんな時間だね」
 マックは悪気など微塵もなさそうに言う。もう慣れてしまったので怒ることも出来ない。ライゼになって初めて驚いた事は、試験中のマックと、普段の彼女の性格はひとつも一致しないという事だったのを思い出す
「すみません。沢山話していただいて……この足ですから、外に出る機会もなくって……」
「買いものとか、私が手伝ってるんだよ」
「……歩けないんですか?」
「まったく、というわけでは」
 マックを無視したが、会話は長く続かなかった。
 暖炉の中で火がはぜる音がした。
 最近は配給される穀物が少なくなってきていやが上にも働かざるを得ない環境になってきているが、この店は改築されたようだから物を売りたくてしているのだろう。
「この店も、友人から譲り受けたもので……。たたんでしまおうかと思ったんですが、出来なくって」
 僕は一人頷きながら展示されている骨董品のような品々を見た。ここに来てからすぐ旅の話をさせられたのでまじまじと見たことはなかった。
「商品も、友人から譲っていただいたものです」
 シューターやエレクトールの使えなさそうなものが沢山置いてある。
「へぇ……。これ、メーレンさん喜ぶんじゃないかな」
 と言ってシューターを指差した。
「そうなの?」
 僕の隣でマックが言った。
「え? あの人、色んなシューター集めてるだろ? 知らないのか?」
「しらないよ。あの人にそんな趣味あったの?」
「うん。この間ちらっと見かけたら鼻歌交じりに手入れしてたよ」
「あんまり聞きたくなかった」
「差し上げましょうか?」
 僕らがそんな話をしていると、ニニーが言った。
「いや、悪いよ」
 僕が断ると、マックは意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「メーレンさんのご機嫌取れば、今度の休暇でアウフに行けるかもよ」
 この間、五年ぶりに故郷に帰ろうという話をヴェンディにすると、「メーレンからの許可がおりれば行って良い」ということになり、メーレンにその話をすると、しこたま罵声を浴びせられたうえに日に日に威力の上がるシューターで撃たれそうになったのだ。マックは時折、どこから仕入れたのか判らないその話を、僕を茶化す事に使った。
 僕は展示されているシューターの値段と数分にらめっこし、故郷である首都に一度帰りたいという気持ちの勝った僕は、それを買うことにした。
「割引しましょうか?」
「いや、必要ないよ。ね、エニモル」
 ニニーの差し出した救いの手をマックが意地の悪い笑みを浮かべながらうち払ったせいで、僕の財布はすっからかんになった。
「ちくしょう……」
 僕は店の外でぼやいた。買った物はポケットの中だ。ご丁寧に箱までつけてくれた。
「……」
 マックが何か思案するような顔で黙ってこっちを見ているので、僕は不安になった。こいつにそんな真剣な顔が出来るなんて。
「なんだよ」
 心配になってきた僕は言った。
「いえ……。ヴェンディさんやメーレンさんと話すときが私と話すときと随分しゃべり方が違うように思うんだけど」
 そんなことだったのか。僕は心配した自分が馬鹿らしく思えた。
「それは、きみが年下だから。乗って」
「……え?」
 聞き返すなんてマックらしくないな、と思った。
「ほら、帰りも僕に乗せてもらう気満々なんだろ? ったく、きみのせいでアートムングさんの所に行き損ねた」
 僕は手袋をしながら言った。
「今から行く? それくらい付き合うけど」
「メーレンさんにどやされるからやめておく」
 そう言って帽子を被ってから防風眼鏡をつけ、リーフェルングを発進させた。風のせいで聞こえなかったが、マックのいたずらっぽい笑い声が聞こえた気がした。
 ライゼエスィヒの広間には、ヴェンディとメーレンが居た。二人は暖炉の前で暖を取っていた。
「今戻りました」
「おぅ、おかえり。どうだった? ニニーの所は」
 暖炉の前でコーヒーを飲むヴェンディが言った。
「知ってたんですか?」
 僕はヴェンディの言葉に驚いた。僕も暖炉の前にたつ。
「あのね、ぼくは元々経済学の教授だったんだ。この地域の店は全部把握してるよ。面白いシューター、いっぱいあったろ?」
 ヴェンディのその言葉に、メーレンが目を輝かせたのが判った。
「あぁ、そうだ。メーレンさんにおみやげが」
 と言って僕はさりげなく賄賂的なおみやげをポケットから取り出した。
「私に?」
 流石にメーレンも面食らったようだった。手渡した箱を開けると、メーレンの顔はぱぁっと輝いた。
「……グスターヴホルスト・マーズ ザ ブリンガー オブ ウォー モデル……!」
「メーレン、そんなにシューター詳しかったっけ?」
 ヴェンディが言って、我に返ったらしいメーレンは僕のみぞおちを殴ると、襟首を掴んで耳元で囁いた。
「何で知ってるんだよ」
「いえ、この間、暖炉の前で鼻歌交じりに手入れしているのを見て……」
 目をそらしていても見えるメーレンの殺気しかない紅い瞳を必死に視界から外す。脂汗がこれでもかと言うほど頬をつたうのが判った。
「こんな大勢居るところでしゃべってんじゃねぇよ」
「……」
 冷や汗をだらだらかきながら僕はどうすれば生き残れるかを考えていた。
「メーレン」
 ヴェンディが言った。
「早く、情報をまとめよう。最近よく出没する反政府組織、アウフエアシューティングについて」
「わかったよ」
 メーレンは僕から離れた。殺されなくて良かったと僕は安堵した。
「北部での目撃証言があったところをさらってみたが、人が居た痕跡はあった。だが、どの場所にも誰も居ない。全六ヶ所。その全てが廃墟だった」
 メーレンは淡々と報告する。マックはそれを手帳に書いているようだった。
「エニモル」
 ヴェンディが言った。僕は一歩前に出て報告する。
「こちらも同様でした。人が居たという痕跡は残っていましたが、誰も居ませんでした。全五カ所。全てが廃墟です」
「……わかった」
 ヴェンディは腕を組んで何かを思案しながら言った。そして一言
「泥沼だな」
 と呟いた。
「今日は解散しよう」
 手をパン、とならしてからヴェンディは言った。解散と言っても、全員がこの巨大なライゼエスィヒに住んでいるのだから、解散も何もないが、それぞれの部屋へ散らばっていった。
 僕も自分の部屋に戻ろうと思ったとき、呼び止められた。メーレンの声だ。
「なんでしょうか」
 殺されると思って身を強張らせながらも僕は答えた。
「お前、アウフに行きたいって言ってたな?」
 メーレンはマックのまとめた書類を読み直しながら言った。
「は、はい」
「いってこい。この件も泥沼だしな。一回気分転換してこい」
 メーレンとは思えない様な優しい言葉だった。
「あ、ありがとうございます」
 僕はお辞儀をすると部屋に駆け足で戻った。
 五年ぶりの、故郷だ。そう思いながら僕は眠った。
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