■スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

■Shot Sight her

「もうちょっと右かな」
 僕は狙いを定めながら言う。
 川のほとり。
「けどそれだと家が入っちゃうかもよ」
 冬というせいもあって枯れた木の前。黒く塗りつぶされた四角の中で彼女らはしかめっ面だった。
「良いからはやく撮ってよ」
 今まで黙っていたランが言った。
「いや、でも、うぅん」
 重たくて黒い、今時はやらないフィルムカメラをぶら下げて、僕は写真を撮っていた。
「はやくー!」
 黒髪のイブキが僕を急かした。
「……うん。わかったよ」
 僕はシャッターを切った。どこか違和感があった。
 その音を聞きつけて彼女らは僕のカメラに群がる。
「どう? 上手くとれたぁ?」
「現像してみないと判らないよ」
「そっかー」
 イブキは残念そうだった。
「でも、どうしていきなり?」
 ランは首を傾げながら言った。
「今度、学校で、文化祭があるじゃないか」
「あるねー」
「あ、そうなの?」
 僕らは幼馴染みだった。高校生になってランだけは別の高校に行き、様々な理由もあって僕らは久しぶりに会ったのだった。
「それで写真展があるんだけど、出してみようかなって」
「ふうん」
「なるほどねー」
 ぱちん。とランが手を叩いた。
「私達をわざわざ呼んだって事は、何かしらお礼をしてくれるんでしょう?」
「え?」
「そういえば、そこのコンビニでウルトラマンソーダが売ってたんだよねぇ」
 イブキがすぐ近くのコンビニを見ながら言った。
「わたしは、肉まんが食べたいな……!」
 ちらちらと、彼女らは僕の方を見てきた。僕はカメラをケースにもどし鞄の中に入れた。
「しようがないな……」
 僕が観念すると、二人は手を合わせてきゃいきゃいはしゃいでいた。
 コンビニに向かう途中。イブキは僕の隣にやってきた。
「なんで、写真なんて撮ろうと思ったの?」
「……なんでって言われても……。人が輝いてる姿を、写したいんじゃ、ないかな」
 彼女は腕を組んで感慨深げに頷いた。
「……なんだよ」
 後ろの方からランの鼻歌が聞こえてくる。I'm just looking for one Divine hammer.
「私達にプリンをとられて泣いていたきみも、大きくなったか……」
「うるさいよ」
 コンビニの中に入る。
「人が輝いてる瞬間ってさぁ――」
 イブキに冷えたウルトラソーダ、ランに暖かい肉まんを買ってあげた。コンビニの外で食べる。
 イブキがウルトラソーダの外側に書いてあるウルトラマンセブンの設定やらを読み、腰に手をあて銭湯で牛乳を飲むおっさんよろしく一気に飲み干した。
「ッぱはァー」
 満足げな顔。そして、寒風が吹く。彼女はぶるぶる震え、隣を見た。
 隣には携帯電話をいじりながらランが湯気の上がる肉まんを頬張っていた。
 イブキは、肉まんを凝視する。
 その視線に気づいたのかランはため息をついて、肉まんを差し出した。
「……食べるの?」
「たべます、たべます」
 イブキがあんぐ、と口を開けて肉まんに手を伸ばす。
 僕は、咄嗟に――『人が輝いてる瞬間ってさあ』――カメラを取り出した。――ピントを合わせ――『生きてる、瞬間じゃないかな』――シャッターを切る――。

8166.jpg

「あー! なに撮ってんの?」
 ランが言った。どうやら不意打ちがいやだったらしい。
「はふはふはふはふ」
 イブキが何かを言う。しかし口には肉まんが入っているため、何を言っているのかが判らない。
「……っと。……輝いてる瞬間、見つかった?」
 肉まんを呑み込んだイブキが言った。
 僕は、迷わず、頷いた。
「そんなことより、次はフランクフルト!」
 ランが、僕の腕を掴んで言った。
「え?」
「『え』じゃないよ。イブキも、行こう」
「わあい。フランクフルトだ」
「……え? ……えぇ……?」



thank you、Guest Artist 零狐乃助
関連記事
スポンサーサイト
タグ : *

■コメント

■コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

 

プロフィール

KANTA

Author:KANTA
Are you alien?

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。