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■レッツ シー イフ ザッツ トゥルー オア ノット 第一章・4




「エニモルッ!」
 テレフォーンの一喝。戻る意識。乾燥した枯れ山の巨大な岩に座って、ぼんやりと朝のことを思い出していたのだ。あの笑みはどういう意味だったのだろうか
「ごめん。考え事してた」
「本当に?」
「……考え事と言えば、考え事かな」
 テレフォーンがひょいと地面に落ちていた石を拾った。
「試験に関係ある?」
「ありません」
 満面の笑みで全身に力を込めているのだから、下手な言い訳をすればきっとあの石が飛んでくるに違いない。
「……」
 テレフォーンは一度ため息をつくと、死体が落ちていた場所の上にある切り立った複数の崖を調べた結果を要点に絞って教えてくれた。実はテレフォーン、こういうのがかなり上手いのだ。
 共通点は全て崖の上から落とされ、崖は場所こそ違えど、地理的には全てベルクと呼ばれるこの不毛な荒野地帯でおきたと言うことだった。
 そして、テレフォーン曰くさらにもう一つあるらしかった。
「ベルクを表徴する枯れ山。つまり私達の居るここと、事件の起きた場所を線で結ぶと、その線は半径になるんだ。つまり、えっと……」
 僕の真横に座って地図を指差しながら彼女は説明してくれたが、急に言葉が詰まった。
「……つまり、場所が全て等距離って事?」
「そう、そうだよ。その通りだ」
「はやいな。予想外だ」
 テレフォーンが咄嗟に立ち上がって真後ろである山の来た道をふり返った。僕も立ち上がってそれを見ると、メーレンが居た。
「気づくのに、あと二、三日かかると思ってたのに」
「あいにく、学校で馬鹿やってるだけじゃないのさ」
「へぇ。じゃあ、もうかえりな。ここは危ないってわかったろ? お嬢ちゃん。ヴェンディはその報告で納得するだろうからよ」
「試験内容は目標の破壊。書類をまとめる事ではないので。……メーレン、あなたさまの武器は、シューターですかね?」
 相手の気を逆撫でするような物言いに、僕は冷や冷やしていた。嫌な汗が額をつたった。
「……」
 だが、メーレンの表情が急に険しくなった。同時に気がつけば両腕を差し出している。と思えば手には奇妙な形のシューターがあった。短い銃身に太い柄。その柄がおわったところに鍔があって分厚い刃の短剣が鈍く光っている。シューター? いいや、シューターのはずだ。いいや。そんなことをのんきに言ってる場合じゃない。シューターの銃口は明らかに僕らを狙っている。まさか、メーレンがこの事件の。
 考えていた時、何かが僕を吹き飛ばした。吹き飛ばしたのはメーレンだった。あの一瞬だけでここまで動いたのだ。
「立て! 立ったら逃げろ!」
 僕はメーレンの言っている意味が理解できなかった。この人は、色んな人を殺していて、それがばれそうだから僕らを殺そうとしていたはずだ。
「ぼさっとするな。にげろ!」
 僕は首を横に振って様々な物を思考や五感から吹き飛ばし、メーレンが対峙するものをみた。
 白い、巨大な蜘蛛だった。だがそれは蜘蛛のような生き物らしさは感じられない。
「エレクトールで動く人形だよ。こいつが殺してたんだ。わかるか? どうせわかんないだろうからその気絶してる生意気な嬢ちゃん連れて逃げろ。ガキ!」
 隣をみると、テレフォーンが痙攣しながら気絶している。外傷はなかった。
「エレクトルプッペだ! くそったれ」
 メーレンはその横で叫びながら次から次へとシューターとは思えない連射を見せている。よくわからないがベルトに付いている弾丸であるエレクトールタウに銃身を押しつけてリロードしているように見える。片手で撃っている間に片方の銃弾をリロードしてそれを撃って、その間に、という感じだった。
 僕は言われたとおりに無傷なのに気絶しているテレフォーンを担ぐと、山の入り口に向かってゆっくりと歩き出した。
 だがすぐに、何かのばらまかれる音がした。
 振り向いてふぐにわかった。メーレンの予備のエレクトールタウだった。当のメーレンは蜘蛛の足に踏まれている。
「メーレンさん!」
「さっさと帰れガキ!」
 蜘蛛の足が硬直して何かを吐き出した瞬間、メーレンの体は大きく痙攣し、彼女はぐったりとした。
「メーレッ――」
 蜘蛛の手前についている足が持ち上がると、こっちを向いた。背筋が凍り、何かが身体を貫く中、あの八本の腕がそれぞれシューターなのだ。――相手を気絶させる効果を持った――と気が付いたが、遅すぎた。
 乾燥した赤土に顔を埋める瞬間、祖父の形見。自分が今堂々と腰に下げている二対の剣が目に入った。
 わけがわからなくなっていると、どろりとした何かが頭の中に流れ込んできた。
 ますますわけがわからなくなって土の匂いを嗅いでいると、蜘蛛人形の動く音が聞こえてきた。このあとどうなる? 殺される。間違いなく、僕も、みんなも。
 ――だったら、これに頼るしかない。
 土の匂いを嗅いでる場合じゃない。僕は跳ね起きた。蜘蛛がおののいた様に見えた。人形なんだから、そんなわけ無い。僕は地面に落ちているエレクトールタウをごっそり片手で拾うと、祖父の形見を抜いた。気高い銀色一色の剣。鍔についている六つの小さな円柱形の飾りにエレクトールタウを差し込む。もう一方も同じようにしてエレクトールタウを差した。
 二対の剣の――どうしてこんな事をしているんだろうか。――柄の終わりを、繋げた。
 本来なら繋がるはずがない。だが、繋がった。柄は一本で刃が両極にある奇抜な剣。だがそれは正解らしかった。円柱形の飾りが下がり、刃が刀身からずれ、内部の構造が少し露わにある。そこから、エレクトール特有の青と黄色の光を両極の刃から発生させていた。なぜ出来たかわからない。けど、偶然じゃない気がした。
 僕は蜘蛛の足下に踏み込んだ。
 いける。剣を薙いだ。
 蜘蛛の方が一歩速く、剣は青い光の残像を残しながらかすっただけだが鋭い傷跡を蜘蛛の身体に残している。
 蜘蛛は身体を四本で支えると、残りの四本はこちらに向け、シューターとして弾丸を放った。
 僕は打ち落としていたがらちがあかなくなって剣を持っている右腕を突き出してそのまま剣をぐるりと回転させた。剣は黄緑色の光の残響を残しながら、向かってきた弾丸を盾のように弾いた。
 そのまま不安定な格好でシューターを撃つ蜘蛛の懐に潜り込み、斬り込んだ。まともに避けることができなかった蜘蛛は腕の半分を失い、地面に落ちた。蜘蛛の顔が僕を見ているのがわかった。
 その顔に、剣を突き立てた。



「首の鎖を取りたがるのは、強い奴か、ただの馬鹿だ」
 冷たい暖炉の前、祖父は暖かく言った。
「僕は馬鹿なの?」
「鬱陶しいものを取りたいと、私も思う」
 皺だらけでかさかさの堅い手が頬に触れた。
「本当に強い人は、愚かなことはせず、常に周りの人のことを考えている――」
「――私は、愚か者だと思うか?」
 なぜそんなことをいうのだろう。僕は何も考えずに否定した。
 祖父は何も言わずに微笑んだ。

 祖父が河で浮かんでいるのがみつかるのは、それから数日してからだった。



 目覚めて最初に見たのは紅い夕日に染まる空と、僕を見るテレフォーンだった。
 そのあと、どうも揺れていると気がついて、きょろきょろした。そして自分が馬車の上に寝かせられているのだと気がついた。
「マック、起きたよ」
 そこまで経って僕はテレフォーンの膝の上で寝ているときがついて飛び退いた。
「やっと気がついたんだ」
 テレフォーンは意地の悪い笑みを浮かべた。
「一番の立て役者なのに、また随分と寝てたな」
「つかれたんでしょう」
 前の座席には煙草を吹かすメーレンと馬車を操るマックがいた。
「もっと飛ばせよ。マック」
「一頭立てじゃこれが限界です」
「あの、蜘蛛はどうなったんですか?」
 僕が言うとマックは前を向いたまま説明してくれた。
「あなたが倒したようです。状況的に。そして私はあまりにも帰りが遅いので山に迎えに行けば蜘蛛人形の残骸と倒れたあなた方を見つけました」
「焦っただろ?」
 頬杖つきながらけだるそうにメーレンが言った。
「かなり。……メーレンさんはともかく、受験生死なせたらまずいですから」
「殴るぞ」
「それは勘弁してください」
 それ以降、会話はなかった。太陽が紅く照らす中、黒い馬車は荒野を進む。
 僕は愚か者だろうか。メーレンさんの命令を聞かずに、敵と戦った。
 死ななかったから良いじゃないか。
 とりあえず今は、そう思うことにした。
 割と速くライゼエスィヒについた僕たちはヴェンディに報告することになった。
「倒した? まさか」
 半信半疑である。エレクトルプッペと呼ばれるあの人形達はそう簡単に倒せる物ではないらしい。
「倒してた。あたしがねてる間に」
 メーレンは壁に寄っかかりながら言った。
「本当に? ……だとしたら、採用決定だな」
「採用?」
「ライゼには活動拠点があるって言うのは有名だけど、ライゼの試験に合格しても拠点の採用がないとライゼとして活動できないんだ。だから、合格と採用両方取れて良かったね」
「ほ、本当ですか?」
 つい声が大きくなってしまう。
「うん。けどとりあえず合格通知送ったからそれ取りに首都に帰りなさい」
「わ、わかりました」
 ライゼエスィヒを出ようとすると、ヴェンディが引き留めた。
「今は馬車ないだろうからもうちょっと待ちなさい」
「……はい……」
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