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■レッツ シー イフ ザッツ トゥルー オア ノット第一章・3




「エニモルさん」
 誰かが僕を起こした。
 夜だろうか。いや、エレクトールの明かりにしては明るすぎる。窓を見ると、朝日が差し込み、鳥が羽ばたいていた。朝だ。
「おはようございます」
 マックは無愛想に頷いた。わざわざ起こしてくれたらしい。それに、僕はどうやらあのまま寝ていたらしい。
「ヴェンディさんから朝食を預かっています。テレフォーンさんはまだ眠ってますが。起こしましょうか?」
 僕はテレフォーンを起こして不機嫌になられたときのことを思い出した。危険だ。危険すぎる。思い出しただけでも身の毛がよだつ。
「やめとこう。いつも勝手に起きるんだ」
 テレフォーンは毎日朝になると鳥のように覚醒していた。そして僕は彼女より起きるのが遅いと頭に水をかけられていた。それなのに起こせばパンの中に釘が入っていたりと一日中不機嫌で地味な嫌がらせが延々続くのだ。
 視線。それのする方を見るとベッドの上でテレフォーンが半身を起こしている。まるで猫だ。
「お、おはよう」
 惨劇を思い出したせいだろうか。恐怖でろれつが回らない。きっと顔も引きつってるはずだ。
「マック、何? それ」
「朝食です。リンゴもありますよ」
「でかした。小さいやつ」
「そろそろ殴りますよ」
 朝っぱらから鉄球を投げ合うような会話を止める勇気のない、というか止めればこっちに飛んでくることに気づいた僕はそれを傍観することにした。
「エニモルさん、ちゃんと止めてください」
「え、あ、小さいとか言うのはやめた方が……」
「お前は黙ってろ!」
 テレフォーンの一喝で粉々に砕け散った僕のわずかな勇気は明けて間もない空に消えた。僕は部屋に居たくなくなり、壊れかけたドアにとどめを刺さないように慎重に開け、部屋を出た。と同時になぜかため息が出た。
「やあ、受験生」
 声がした方を向くと、ヴェンディが歩きながら書類を片手にコーヒーを飲んでいる。かなり忙しそうである。声をかけられたとはいえ、仕事の邪魔をしているような気がした。
「忙しそうですね」
「まあね。八年前までは、アートムングさんがやってたんだけど……、きみの養父――お爺さんのロッキーさんが死んでから、めっきり無気力になってね。けど薪割りはしてくれるよ」
 ロッキー。ロッキー=ティア。僕の身体がまばたきみたいにびくっと震えるのがわかった。
「……最後に一つ、質問。していいかい?」
 僕は顔を上げた。彼の優しい緑の眼が見え、頷いた。なぜか断れなかった。
「きみは、お爺ちゃんに憧れたのか?」
 僕は首を横に振った。それだけは違う。
「壁の外に、何があるかを、僕は知りたいんです」
「……首の鎖を脱ぎたがるのは、強いやつか、ただの馬鹿なんだよ」
 祖父も言っていた言葉だった。
「僕は――」
 ヴェンディは自然としみ出したような笑みを浮かべて書類片手に迷路のような廊下の奥に消えていった。
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