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■六十八頁

「……本当か?」
 まだ若いエレヌは、静かに、そっと頷いた。

 闘技場の上で、大の字になって寝ころぶ男が居る。ルーシルアである。
「ふむ」
 隣でムラースが言った。額には細い傷がはしり、血が細い線を描いて頬を通り、滴っている。
「仮にも、私に傷を負わせた自慢の弟子だというのに、情けない」
 ルーシルアは、はっはと息を切らせている。全身汗でびっしょり濡れている
 ムラースは、そのさまをみつめ、もう一度「ふむ」と呟いてから、ルーシルアの余暇に座り、足を投げ出してから額の血と汗をぬぐった。
「だいたい、傷っていっても、剣の先がちょっと当たっただけで――」
「確かにそうだが、お前は私の攻撃をすべてよけたじゃないか」
「……それは、まぐれです」
 ルーシルアは息を整え、唾を呑んで、もう一度言った。
「もう一度やれと言われても、無理です」
「私が一番長く育て、そして最も強い男だ。お前は。胸を張れ」
「……胸を張れ、ですか」
「どうせ、また自分のような人間が、とか思ってんだろ。一応言うけどな、お前が死ぬことはないね」
「……どういう、意味ですか」
「あー? それは、裁判があれば判ることだよ」
「ルーシルアぁ?」
 会話を妨害し、現れたのはハーンだった。
「ハーン」
「おう、兄貴。裁判、始まるってよ。着替えてくか?」
「いや、いい。この汚い服は、罪人にはぴったりだろう。それより、なんだ? 『兄貴』って」
 自嘲的に笑うルーシルアにハーンは近づき、肩に手を回した。
「兄弟弟子だから兄貴さ。『ルーシルア様』何て呼ばれるより、いいだろ?」
 ――安直な。そう思いながらルーシルアは肩の手を除けた。
「それより、お前、もっと訛ってなかったか?」
「あれかい? あれは演技。師匠様に言われて、あのお嬢様を連れてくる予定だったんだ。けど、あんたが出てきたから、しょうがなく渡した。わかった?」
 ルーシルアは呟き、裁判所へ向かう廊下を歩き始めた。
 〈碧の国〉の城は、様々な物が中に押し込められていると言ってもいい。王族達の暮らす区域は勿論、貴族の暮らす区域、兵舎、裁判所、闘技場、庭園、頭がおかしい科学者達の研究所、巨大な宗教施設。それを城壁が囲い、その周りに城下町。その城下町を覆うようにまた城壁がある。
 裁判所の扉を開けたルーシルアは、そこに沢山の見物人と、王が一人立っているのが判った。
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