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■六十四頁

 飄々と言うルーシルアに、鉄拳がとんでくるかと身構えたが、それはなく、もっと度肝がぬかれるようなものが、そこにあった。
 何と、ムラースの目に、涙が溜まっているのが見えた。目は充血している。眉間の皺ばかり気になって、全く気がつかなかった。
 それにしても、今は女性であるムラースに、泣かれるのは初めてだったので、ルーシルアは驚いた
「……すみません。本当に……。もっとはやくこれれば」
 うつむき、ルーシルアは言った。
「ルーシルア……。何を、しにきたんだ?」
「贖罪です。自分の罪を、償うために」
 そうか、とムラースは呟いた。
「……あと、師匠に殴られようと思って」
 ムラースはにっこり微笑み、そうか、と言うと、眼にも止まらぬ速度でルーシルアの頬を打ち、また生々しい音を立てながら、ルーシルアは後へすっ飛ばされた。

「この、お嬢さんは?」
 客室用の部屋に通され、一通りの説明が終わった後、ムラースは言った。
「……〈黒の国〉の、家出王女です」
 きっぱりと言った。隣でサークナヤがこっちを見て狼狽している
「そうか……思い出した。まだ幼かった君に、カミンズ国王は言ったのだったな」
 カミンズとは〈碧の国〉の国王である。
「『困ったことがあれば、私の国に来い』と、確か、そう言っていたな。……まさか、憶えていたのか?」
 サークナヤは頷いた。
「ふむ、我らが王女と、同じ名を持つ者だ。歓迎しよう。……ついてきなさい」
 ムラースに手を引かれ、サークナヤは部屋を出ようとする
「……あ、将軍」
 ふと思いついたようにルーシルアが言った。
「なんだ?」
「将軍って、何歳ですか?」
 フラウ・ウェアはある程度身体が成長してからは不老であり、そのため、興味で年齢を聞くと、爽やかに教えてくれるか、敵対されるか。そのことを思い出したルーシルアは、必死で訂正した。
「い、いえ、将軍はいつもお綺麗なので、ちょ、っと、気になっただけです」
 そんな弁解も虚しく、また後へすっ飛ばされた。
「調子に乗りすぎだ」
 そう言うと、ムラースは大きな音を立てて扉を閉めた。
 調子に、のりすぎか……。そう反芻して、ふ、と笑った。
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