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■六十一頁

「……申し遅れました。わたしは、ヤーと言います」
 初老もとっくにすぎた鼠のように小さく背がおり曲がっている男が言った。
「……俺の名前は、大方、そこにいるサークナヤから聞いたんだろうな」
 ヤーは頷き、にっこりと笑っている。
「ルーシルア殿の傷がふさがり次第、〈碧の国〉への案内をつとめさせていただきます。何かあればすぐおよびください」
 そう言ってヤーは出ていった。
 ルーシルアは、目を伏せ、さっきの夢で、忘れていたことをふと、何となく思い出した。
 ――あぁ、そうだ。俺は……
 昔、母親は幼い自分を捨てた。動物が自分に攻撃を仕掛けるという呪いをかけて。だが、幼少、赤子だった自分は死ななかったのはなぜか。……母親は、「攻撃を仕掛ける」呪いなんて、仕掛けなかったのかもしれない。かけた呪いは、「動物が近寄る」呪い。あるいは、動物に好かれる呪いだった。そして、夜、ルーシルアの呪いが最も強くなるとき、赤子を、誰かが拾った。おそらく、子供を産んだばかりの動物だったはずだ。……きっと、妖獣だったに違いない。そうして、ルーシルアは育てられ、少女、ファンタンと出会い、人間であるルーシルアを、置いてきたのだろう。そして、ルーシルアは育ての親を捜すうちに、森の中で迷い、手に持った木の棒で、近寄る動物たちを殴り潰していたのだろう。そういう予想を立てた。
 真実かどうかは、判らない。けれど、心のどこかはそれを強く肯定していた。
 日光を浴びながらそんなことを考えていると、不意に声があった。
「ルーシルア?」
 サークナヤだった。
「おう。よく迷わずに、助けを求められたな」
「……何でかよくわかんないけど、そこの子が教えてくれている気がした」
 ルーシルアのとなりにいた狼が「ばう」と吠えた。「いかにも、そうである」と言いたげだ。
「へえ」
「……ファンタンは?」
「……あの動物使いの人が逃げて、ついさっきまで、ここにいたけど、どっかいっちゃった。」
 サークナヤが寝るまでは……と言うことだろうか。そうか、とルーシルアは呟いた。そして、目を閉じた。
 目を閉じながら、様々なことに思いふけっていると、部屋のドアが開いた。これも石製である。
「傷口をふさぐ薬を、持ってきました」
 ヤーが言った。
「ヤー、それを貸してくれ」
 ヤーはきょとんとし、そしてまた優しい表情に戻って、茶色い液体の入ったグラスを差し出した。
 それを殆どぶんどるような形で奪ったルーシルアは、一気に飲み干し、さらに手を出した。顔はあまりの苦さで歪んでいる。
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