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■五十九頁

「ひゅっ」
 ファンタンのうめきが聞こえ、彼女は地面に片膝をついた。
 ルーシルアは身体ごとファンタンの方を向いた。
「……」
 ファンタンは右の脇腹を押さえ、ルーシルアを見ていた。
「……が悪いんだ……! お前達が、悪いんだッ!」
 ファンタンが不意に跳躍したかと思うと、身体の皮膚がすべて裂け、その中から金色の体毛をした狼が現れた。それも、金色の鎧を着たような狼で、鎧からは何枚も刃が突き出ている。
「……私は、悪くない……」
 泣きじゃくったような声だったが、声だけが響いてくるだけで、泣いているかは判らない。
「……来いよ」
 両手を広げるような形でルーシルアは言った。ファンタンも駆ける。大きく口を開いた狼が、ルーシルアの腹に噛みついた。
 よけることもできただろう。だが、狼はルーシルアの腹部に深々と牙を突き立てている。
 ルーシルアはファンタンをやさしく抱きしめた。
「……いつか、本当に、自分が悪くない、と言い張れる時代が来るはずだ。それまで……それまで、ちょっと長いから、俺のせいにしてくれ」
 狼は白い煙のような光を出しながら、人間に戻った。
「あなたは、どうしてそんなにお人好しなんですか」
 ルーシルアは弱々しく微笑んだ。
「それが、俺の罪の償い方だ」
 ルーシルアは卒倒した。



 少年は奔っていた。逃げていた。
 日はもうとくに沈み、押し寄せる虫の群もものともせず、奔っていた。満身創痍で、何もかもがおぼつかなくなる中、ただひたすら奔っていた。
 ふいに、虫で視界が遮られ、それでも奔ろうとすると、ルーシルアは何かに当たった。何かが散らばる音がした。
 少女が、そこで倒れていた。外套で全身を覆い、顔すらも隠していた。
「……す、すまん」
 ルーシルアははっとなって手をさしのべた。
 少女の相貌がルーシルアを受け止めると、少女の顔が上気したようにみえた。
「……まさか、こんな所で、あなたに出会えるとは」
 少女は言った。
「……君は、いったい?」
 少女は、少し微笑んだ。
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