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■五十八頁

こうとも思ったが、サークナヤを置いていけば、自分を捜し、この迷路のような坑道で迷ってしまうだろう。
 そうして、ファンタンを追った。ファンタンは思ったよりもはやく立ち止まった。
 目の前には、聖堂のようなものがある。白い石で作られた石畳を積み重ねて、壇上にし、そこに何本も柱を立て、屋根を置いている。
「……」
 そこから二つの影が出てきたかと思うと、褐色の肌をした少年と、ファンタンだった。
「……お前が……獣使いね」
 もっと違う何かを想像していたため、ルーシルアは少し狼狽した。
「……ファンタン……やってくれるね?」
 少年が言った。
「……えぇ。ムウ。……あなたに仇なす者を、私が、倒してみせます」
 ルーシルアはサークナヤを後に下がらせ、その光景をさもつまらなさそうに見つめた。
「終わったかな、ささっと終わらせたいんだ。そして、サークナヤと一緒に〈碧の国〉に行く」
「……〈碧の国〉……。残念ですね。あなた達二人は、今ここで、私に、平げられてください」
「『平げる』? 随分と野蛮だな。ファンタン。そんなに今の首輪が大事か。もっと自由に生きる事ができないのか」
 ルーシルアは呆れた風に言った。右手は腰に当てている。
「……私は、私の意志で、こ、これを、やっているんです!」
「良いように利用されてるだけだと思うね。知ってる? 『ヴァイス・フント』って。お前、それにそっくり」
 おとぎ話の一つで、白い犬が黒い犬に良いことだと騙されてやったことが、実は悪いことで、白い犬は黒い犬に良いように騙されていた、と言う内容である。
 ファンタンの眉間に皺が寄る。
「その、減らず口も、もう、たたけなくしてあげましょう」
「おぉ、こわいこわい。今のうちにたたいておくか。減らず口」
 ファンタンが跳んだ。四肢はひぐまのように太く、金色の毛で覆われ、巨大なかぎ爪が生えていた。
「あなたのせいだ。あなたのッ!」
 すべての攻撃をひょいひょいよけ、剣も抜かず、そのさまを腕を組んで見ている。
 ふと、いつかの剣術修行の時を思い出した。その頃のムラースも、ルーシルアの攻撃をひょいひょい避け、腕を組んみ、優しい顔で見守っていた。少なくともルーシルアにはそう見えていた。当時ルーシルアにとって、ムラースはある意味母親のようであり、サクナは姉のようであり、レーベンは兄のようであった。
 本来ならここで、ここがこう悪い。だとか言う必要があるが、ルーシルアは黙っていた。そして、攻撃が当たらないことに焦ったファンタンが、大振りの攻撃をした。
 ルーシルアはその瞬間を見逃さず、剣を抜き、柄を片手でもってファンタンの脇腹をえぐった。
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