■スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

■五十六頁

 両壁に松明が連なって燃えている。
「……この場所はもう使われていないはずだが……」
 サークナヤを起こさないよう、話し声が小さくなる
 火打ち石を出そうとした手を引っ込め、そのまま腰に当てて辺りを見回した。
 異様に明るい。
「……燐石も使ってるな。これは」
 燐石とは、明るく発光する石のことで、城などの壁によく埋め込められていた。しかし、消す手段がないことから、次第に使われなくなった。
 その明かりに釣られ、歩を進めると、あまりの明るさに仰天した。まるで昼のように、橙色の明かりが一面に広がっている。
 両壁からは松明が消え、その代わり、石を削って作られた青白く光る家屋が、いくつも並んでいる。
 その幻想的な場所をサークナヤに見せたくなり、起こそうとして――やめた。寝かせておこうと思ったのではなく、周りに人の気配があることを察したからである。
「……出てこい」
 ぞろぞろと出てくる人皆猫背で、紙を丸めたようなくしゃくしゃの肌をしていた。
「あなたを、高貴な旅人と知ってお願いがあります」
 いきなり出てきたしゃがれた声に、びく、っとなった。
「まず、旅でお疲れでしょうから、こちらへ……」
 にこにこ顔の男が言った
 連れられ、入ったのは、どうやら宿であるらしかった。
「あなたが来ることを、我らは石占いで察知したのです」
 目の前に並べられる食べ物の数々。
「さ、どうぞ。お召し上がり下さい」
「……ここまでして、こなして欲しい用件てのが、あるんじゃないのか?」
 にこにこする男の顔が引きつった。
「もう使われていない坑道に、なぜ人間が居る」
「……我々は、この鉱山の入り口の周りに住んでいた者達であります。我々は疫病に冒されながら、この中に逃げ、こうやって生き延びております。……この建物を見れば、その腕前は理解していただけるでしょう」
 そう言われ、確かに、と頷いた。
 机も、椅子も、壁もすべてが石で、細かな彫刻に至るまで精緻で非の打ち所がない。
「……ですが、あいつがやってきてから、。すべてが変わりました」
「あの男は、ここを新たな街として拓こうと準備を進める我々の輪には入り込んだかと思うと、あ、っという間にその獣を操る技で銀狼共を引き連れ、さらには、妖獣までも……とても、我々の手に負う相手ではありません。……どうか、助力をお願いいたします」
 ルーシルアは何度か頷き、目を泳がせ、目を覚まして目の前のご馳走を喰らうサークナヤを見た。
関連記事
スポンサーサイト

■コメント

■コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

 

プロフィール

KANTA

Author:KANTA
Are you alien?

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。