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■五十四頁

 サクナの手を引き、木々を指差した。城の庭園にいた。
 鳥が飛んでいる。じゃれ合いながら楽しそうにさえずっていた。
「本当。聞こえるわ」
 さっきまでレーベンがいたものの、どこかへ消えてしまった。
「レーベンはどこに行ったのかしら」
「〈花の国〉の人から貰った音楽を奏でる箱を取りにいったんじゃないかな」
 〈花の国〉。フラウ・ウェアの住む世界。フラウ・ウェアは〈フラウ・ラント〉と呼んでいた。
「へぇ……。じゃあ、ほかには、誰も居ない?」
「うん。僕も、今は居ない方が良いかな」
「いいえ。ルーは、ここにいて……」
 弱々しく言った。
 なぜかそう言われ、力が出た。
「お願いがあるの」
「なんだい?」
 妙に張り切った声。自分でも驚くほどの。サクナに貰った、武魂を打って作った剣を今にも掲げるんじゃないかと言うほどの張り切りようだった。
「……殺して」
 気持ちのいい空に、その言葉は消えていった。
「……え?」
 思わず聞き返す。冗談だ。
「……『碧の名を継ぐ者は完全、潔癖であれ』……。私はもう、誰にも求められていない。」
「そ、そんなこと――」
「あなたにはわからなかったでしょう? みんなの、失望する声が。……私は……私は……もう、誰にも求められていないの」
「……そんな……けど、けど僕は、僕には、サクナが必要だよ!」
 サクナは、笑みを浮かべ、目の前の人物に抱きついた。
 安心するルーシルアにサクナは、冷たく言った。
「もう、何もかも、手遅れだわ」
 ぞっとする声。
 気がつくと腰の剣が抜かれ、サクナの胸に切っ先があった。
「や、やめてくれ……サクナ……」
 半べそをかきながら、ルーシルアは言った。
「わたし、後悔はしないわ。」
 何を、とはきけなかった。剣はサクナの胸を穿ち、彼女は崩れ落ちた。
「……」
 声をかけようと、その虚空をたたえる両目に話しかけようと、口を開いたとき、茂みから、一人の男が現れた。
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