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■二十九頁

 ――ばちん。
 短い悲鳴を上げ、何かが倒れた。おそらく、ルラムだろうと思った。
「ルラムッ! どうし――」
 ――ばちん。
「エネトゥス? 大丈――」
 ――ばちん
 ゆっくりと目を開けると、そこには床に伏せる三人の姿があった。
「ば、化け物か、お前」
 ルラムが罵った。その声には力がない。
「〈ファントム・ペイン〉だよ。鋭い刃を想像してみたんだが、どうだった?」
 ルーシルアにしては珍しく、飄々と言った。
「……な、めんなァッ!」
 ルラムが石弓のように跳ねた。ルーシルアは突き出される針のように鋭い剣を間一髪で避けると、また同じようにしてエネトゥスが剣を振った。
 左の二の腕がその一撃をよけ、血が奔った。
 かすっただけか。エネトゥスの呟き。それすら聞こえるほどに、ルーシルアは集中し、五感を鋭くさせていた。
 何かがはぜる音。咄嗟に振り向き、燃えさかる〈式〉を思考の及ばない何かが斬った。 ――一閃。精緻な〈式〉が斜めにズレた。二つになったそれは蛍のような淡い光を明滅させながら消えた。
「〈式〉を斬った……?」
 シャンがありえないと思いつつも、今、目の前で起きた出来事をゆっくりと獲物を呑む蛇の如く呑み込んでいった。
 シャンがそう言っている間も、戦闘は続いていた。二人の一閃を確実に避け、確実の一撃を狙う。
 気の長くなるような戦い方だが、確かにその戦法であのウィリディンはたおされたのだ。そう思い慎重に剣を振るうエネトゥスをよそに、獣のように剣を振るう狼さながらの少女が居た。ルラムである。
 手に持つ物が次第に重くなってゆく、と言う親からの呪いをうけ、山のように重くなった剣を軽々しくも振るう。その一撃は、頑丈に造られたはずの床を砕いた。それはまるで子供がビスケットを叩いて砕くように軽々しいものだった。
 その光景に目をむきながら、ルーシルアは次の攻撃を鉄剣で受け流した。最早避けることが不可能なほど、速い一撃なのである。
「シャン」
 エネトゥスの一言で、床に細かな〈式〉がびっしりと書き込まれた。すぐにそれが、床の破壊を止めたのだと知れた。
 ルラムの激しい雨のような攻撃のせいで、迂闊に手が出せなくなったエネトゥスは、ルラムが放った一撃の刹那――目をむいた。



やっぱ、戦いのことになると楽しそうね。ルーシルア。


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