■2010年10月

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■ナイフを持った少女

 彼女は他人の前で涙を見せない。それがはなについてかのけ者にされていた。むしろ、彼女が周りを避けていた。
 けれど彼女は綺麗で、言い寄る男は少なくない。その度光る彼女の鋭い目の光はナイフに似てた。
(カッコイイな)
 僕は密かにそう思っていた。みんなの表情を見れば、たぶんそんなこと微塵も思ってないだろう。
 そう思いながらも、土曜の朝を犬の散歩に費やしていた。
 田んぼのあぜ道を抜けると言うとき、向こう側に見覚えのある女性を見かけた。
「あ……」
 彼女は僕に気づいてなかった。田んぼの横にある電柱に花束を添えていた。
 僕はそこから引き返すことも出来たはずなのに、犬の方が言うことを聞いてくれなかった。犬は、
「いつもの道を歩かせてくれよ」
 とダダをこねた。
「しょうがないな」
 僕は妥協してしまった。すると、彼女はこっちに気づいて、まず顔を隠した。目尻に浮かぶ涙もナイフのように輝いていた。
「なによ」
 彼女はわざわざ自ら僕が近づくのを待っててくれた。
「ここ、むかし、酔っぱらったおじいちゃんが原付でつっこんだって聞いたけど」
「……私の祖父だけど」
 彼女はいつものむすっとした顔で言った。
「あ、ごめん」
「犬の散歩?」
「そうだよ。たしか、名前がチャコ」
「『たしか』?」
「ごめん、よく憶えてないんだ」
 彼女は仏頂面を崩さずてきとうに頷いた。
「ねぇ、なんでいっつも不機嫌そうなの?」
 言ったあとでなんとなく、しまったと思った。
「祖父の言いつけ。『他人の前で笑うな』って」
「おじいちゃんっ子だったんだね」
 僕がそう言って、妙に、気まずい、沈黙が流れた。犬がドヤ顔でこっちを見てる。その顔はまさに「やっちまったな!」と言いたげだ。
「……ありがと」
「え?」
 彼女の頬は紅潮していた。
「照れてる……。ってことは僕はもう他人じゃないってことなの?」
 今度はきりっと僕を睨んだ。
「なんで、こんなヤツに喋っちゃったんだろう」
 次に彼女の顔に浮かんだのは暗たんとしたものだった。
「なんだ、ころころ表情が変えれるんだね。もしかしたら特殊メイクでその表情に貼り付けてるのかと思った」
「そんなわけないでしょう」
 呆れた顔になった。なんだか面白い。
「なんだか、きみを笑わせたくなってきた」
 僕がそう言うと、彼女は深くため息をついた。あきれ顔を深め、彼女は肩をすくめた。
「やってみろ」
 その顔は、ナイフみたいに尖った微笑みに見えた。
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■拳銃を手にした少年


 ぼくの学校ではけんじゅうがはやっています。
 学校のまえで黒い服をきたおじさんがにこにこわらいながらくばっています。じゅうだんをいれて、引き金をひくだけで嫌いなひとがころせるんだそうです。
 みんな、黒くひかるけんじゅうがかっこいいのでうけとっていました。ぼくのランドセルにもそれがはいってます。
 みんなそれをひとに向けて遊んでいます。けど引き金は引きません。ひいたら、あいてが死んでしまうからです。「いのち」はとてもたいせつなものなんだそうです。
 ぼくはみんながとても大切なので、ぜったいにむけても引き金はひきません。
 けれど、あるとき、おかあさんが怒りながらぼくにいいました。テストの成績が悪かったからです。「なんでこんな点数なの? ちゃんと勉強したの?」
 ぼくはそのこえがうるさいので、じゅうを向けてしまいました。それでおかあさんがだまってくれるかなと思ったからです。
 けれどつぎに気がついたときはかわいた音がなっていました。たんじょう日のときにならすクラッカーのような音でした。けんじゅうから白いけむりが出て、おかあさんがたおれました。
 きっと、おかあさんは寝たふりを、うたれたフリをしてるんだろうと思いました。
 テレビをつけてアニメをみているうちにおとうさんが帰ってきました。おとうさんがなにかをやかましくさわぎました。ぼくは手にもったままのままのけんじゅうをむけました。またかわいた音がして、おとうさんがたおれました。
 ふたりともそんなに疲れていたんだな。ぼくも寝ることにしました。朝おきてもふたりは眠ったままでした。そっとしておこうと思い、ぼくは学校へ行きました。

 これが、ぼくの最近おきたことです。
 さん年に組、山本 ケンタ



 僕が自慢げに席を見渡すと、クラスメイト全員が僕を見ていました。
「それは、言わない約束だろ」
 数十の銃口がこっちを向いて、数十の乾いた音が鳴った。
 まるで、誕生日みたいだ。

■Mo12・行楽

  お互いの欠けた隙間を埋め会った日々。
  あの素晴らしい世界  (the pillows「That's a wonderful world(song for Hermit)」)


 僕らはライブハウスの袖にいた。
「……」
 僕は大変暗鬱な気分だった。宇摩(うま)はいつでも突然すぎる。
「新曲は憶えたな?」
 残念そうな顔で山中(やまなか)がきいてきた。僕は頷き返した。
「音楽を愛してたころのノリを思い出せよ」
 代田(しろた)も今日は優しい。こういうときに限って。
「いくぞ」
 むすっとした宇摩は僕の肩を叩いた。彼女なりの激励なのかもしれない。
 袖から出ると、そのオーディエンスに目眩がした。
「俺たちは前座だ。これから出るムーブメントっつーバンドに、これだけ人が集まってんの」
 山中がギターを抱えながら言った。
「そういうのって、宇摩さんが持ってくるんですか?」
 僕もギターの音階を確認しながらきいた。
「そうだ」
「いくぞ」
 宇摩がスティックを鳴らした。
 僕らはうたを始めた。

 僕たち「レイトブルーマーズ」はもはや打ち上げのためだけにあるようなバンドだと思う。
「あの、結果としてどこに向かってるんですか? このバンドって」
「しらん」
 山中が鉄火巻きを独占しながら言った。すこしは分けろよ。
「俺も実は聞きたかったんだよ。どうなの? 宇摩チャン」
 代田があらびきソーセージを独占しながら言う。どんだけ好きなんだ。
「自分で決めろ、有川(ありかわ)」
 宇摩がビールジョッキ片手に言った。
「僕ですか」
「これはお前のバンドだ」
「……」
 僕は黙ってしまった。どうしろっていうんだ。
「おっ」
 そういう声がした。現れたのは僕たちと同じように楽器を掲げる男、四人だった。
「宇摩さん、おひさしぶりです」
 男女のうち最も身長の高く、黒髪に柔らかくウェーブをかけた好青年が宇摩に声をかけた。
「……もうライブは良いのか、田鍋(たなべ)」
 静かに宇摩が言った。代田と山中と僕は取り残された。
「あいつ、ムーブメントの……」
 代田が言う。
「あぁ……。ギターの?」
 山中が格好いい手つきで目の前にある物を取った。だがそれは鉄火巻きなので格好良さと言っても度が知れてる。というか間抜けだ。
「ムーブメントって、僕らのあとにやるバンドでしたっけ」
「ここいらで一番人気だよ」
 代田が言う。
「終わったあと、お話ししたかったのに……。でも、こうして会えたので良かったですよ」
「あー……」
 宇摩はたいへん面倒臭そうだった。
「すこし、ご一緒させて貰っても?」
「私は構わないが、うちのリーダーが許しはしない。別の席で――」
「有川っ!」
 居酒屋の扉が開き、一人の女性が現れた。その声に僕のウーロン茶を持つ手が震えた。
 顔をうつむけさせた。みちゃだめだ。どてどてと近寄る音がした。またあいつが馴れ馴れしく僕に触れてくる気がした。それは、何としてでも避けたかった。
 だが、そのときは一向に訪れなかった。ちらりとその方向を見ると、隣にいた山中が立ち上がり、机の向こう側にいた代田も立ち上がってあいつの行く手を阻んでいる。
「どいてくれませんか」
「あ?」
 山中の背中越しに、彼の睨む顔が見えた。
「私は、あなた達の、有川ユキトさんに用があるんです」
「ごめんね、いまあいつ、ちょっと気分が悪いみたいだからあとにしてくれないかな」
 代田が優しく言った。
「どいて……」
 あいつは持ち前の強引さで、山中と代田の間に入ろうとする。
「愛野(あいの)、やめろ」
 それを止めたのは田鍋だった。彼はあいつと他のメンバーを引き連れ、居酒屋から出ていった。
「……ふう」
「めんどくさそーな女だったな。美人だったけど」
「ありがとう」
 二人は座敷に戻った。
「いやまあ、お前がつらそーににしてるからな。顔、会わせようとしなかっただろ」
 代田が言う。
「あいつと、どういう関係なんだ?」
 山中が鉄火巻き片手に言った。
「高校の時、僕を裏切った主犯ですよ」
 宇摩はずっと悲しそうな顔をしていた。
「バンドで、ちゃんとした曲をやる予定だった。でもあいつが裏切って、他の奴らも乗った」
「それで、お前、一人でステージにたったのか……」
 山中が目を丸くした。
「だから、バンドをやめたそうだ」
 宇摩がつけくわえた。
「宇摩サン、よくムーブメントのボーカルがそうだってわかったな」
 代田が聞いた。
「ムーブメントのメンバー……、田鍋とは仲が良くて、あいつが新しいボーカルの話をしてたんだ。そして、有田の話も聞いて、ぴんときた」
 宇摩はビールを飲み干した。
「……僕は、僕らは……」
 親友だったはずだ。あの時まで。
 僕が文化祭でバンドをすると言ったとき、彼女は二つ返事で参加してくれた。バンドのメンバーも、彼女目当てで参加した。
 目一杯練習して、本番を向かえた。誰も来ずに、僕は一人でステージに立った。予想とは違うメンバーに客がざわめいた。曲なんて演奏できなかった。
 僕は、ギターを持たなくなってしまった。
「決めましたよ、バンドの方向」
「……」
 三人が静まった。最初から黙っていたが、明らかに「話を聞く」と言うスタンスが見えた。
「ムーブメントを、越えます」

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